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2013-11-15

春風録:ちくりんの里での看取りとその背景にある考え方

image来年でちくりんの里が開設して10年目となります。

開設時より、入居者の看取りを経験させて頂きました。最初は、十分な心備えがないままでしたので、不安のなかでの看取りをせざるをえませんでした。

入居される方及びご家族は終の棲家として落ち着いた暮しをおくりたいと望んでおられます。
高度な医療の対応は、出来ませんが、私達も、ご家族と共に出来る限りの支援をさせて頂きたいと思っています。

高齢者にとって住み慣れた家が一番いいことは、言うまでもありません。しかしそれは、そこで支える家族があっての話かもしれません。
グローバル化社会となり、人は、自由に、学び、行動し、自己実現が出来る時代になりました。その裏腹に、家族制度が崩壊し、核家族化、老々介護が浮き彫りになってまいりました。

在宅での半分以上が、孤独死であることは大変残念なことです。

老人福祉法の特養の基準三十三条では、在宅と入居後が、連続したものと明記してあります。
「ここを家にしたい」
特別養護老人ホームが家であれば、家族がいて、馴染の職員がいて、そこに社会があって、孤独ではない空間で暮しをすることが出来ると思います。

2015年からは、特養に入る基準が、重度化となり、また、高齢者負担も多くなることが確実視されてきました。

そういった背景の中で高齢者施設での看取りが更に求められています。

ユニットケアはそれにこたえる準備があります。

では、どのような看取りが出来るのでしょう?

加齢による老衰は、その方に合ったリズムを職員が見つけだし、美しく老いていただく為に、ユニットや各部署が連携しながら支援をしていくことにあります。
回復の見込みが難しい方(例えば末期癌等)の苦痛を緩和し、精神的に支え、生を全う出来るように支援する介護や医療が今求められている。

○ICF(国際生活機能分類)の理念に沿って考える。
ここでICFの視点という耳慣れないそして重要な考え方について書かせて頂きます。

2001年5月22日に第54回国際保健会議(WHO総会)で
国際障害分類(ICIDH、1980)の改定版が採択されました。
正式名称は「生活機能・障害・健康の国際分類」ですが、英語の頭文字の最初の3字をとって
ICFの略称で呼ぶことになりました。

厚生労働省による公定日本語訳でも略称は「国際生活機能分類」と呼ぶことになっています。
「生活機能」とは耳慣れない言葉ですが、
「障害というマイナスだけでなく 障害者がもつプラスの面にこそ着目しよう」という新しい考え方に立ったものであり、新世紀にふさわしい画期的な考え方の転換ということが言えます。

その考え方の中心はQOL(生活の質)を数値に例えると
「健康」を100とし「死」を0とする
ICIDHの相対的(物事を比べて考える事)な概念ではなく

生きている瞬間全てを100とする実存的(在るものそのものを受け入れること)な思考となります。
例えば、寝たきりの方は、「死」と命がけで戦っている状態としてその存在を100とする考え方なのです。

ICF視点をを具体的に表現してみます。

例① ケアプラン
ICIDHでは、ある入居者様が、右の麻痺をお持ちだとします。その麻痺側に対してよくなるようなケアプランを立てていました。これをネガティブプランとします。
ICFでは左の機能を積極的に支援するつまり、残存機能を生かす為のポジティブなケアプランを立てて、入居者様を支援することを求めています。
例② 看取りについての考え方
健康から死を
全て100とした
ICFの視点を踏まえ
「看取りとは、呼吸することを保証するのではなく、生きることを支援する」こととしてとらえることなのです。
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言葉の説明
ICF
International 国際
Classification 分類
of Functioning 機能

ICIDH
International 国際
Classification 分類
Impairment 機能障害
Disability 能力障害
Handicap 社会的不利

変更した部分は
IDH(全て障害を示す)が
F(機能は、健康と障害を含めた視点とする)に変わったのです。

ICFでは、マイナス要因をハンディキャップとして捉えるのではなく、別のプラスの能力を持つ視点とする。

看取りについても、ターミナル(終着点)という概念は存在せず、生の一部とした視点なのです。
今回は、非常に難しいことをテーマにして書いていますが、これは、ちくりんの里だけではなく国際保健会議での世界共通の考え方の背景であることを憶え、ここに、書きました。

先日、私は吹田の竹見台中学校の一年生の前ででこの話させていただきました。正直なところ、伝えたい内容が、しっかり伝わるかが心配でした。
「今までいろんな方の前で語る機会を与えられてきたけど中学生一年生には、少し難しかったかもしれない。」初めての体験でした。
その翌日、学校の先生が中学生の四十五人分の感想文を持ってこられました。一枚一枚の感想を読んで、この難しいことの内容をきっちり受け止めてくれている事にとても感動をいたしました。ここに紹介致します。

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「今回は、老人ホームの事についてたくさん教えて頂きありがとうございました。少し難しかったけどいろんなことを学びました。まず、今は家で生まれて家で亡くなることが少なくなったという話をされましたよね。僕も病院で生まれました。でも最近家で亡くなるご老人は孤独死が多いと聞いて驚きました。だから僕も孤独死が出来るだけ、なくなったらいいと思いました。施設長さんは、老人ホームは家だと言っていました。僕も前、ある施設に行った時、部屋にいろいろな家具が置いてあったので驚きました。他にも障害を持っている人は、別の能力を持った人だと言っておられましたが、確かにそうだと思います。僕の祖父と祖母は耳が聞こえない障害を持っているけど、楽しく生きているからです。今回のお話はすごくためになったのでこれからも仕事を頑張ってください。」
一年Aさん

「お話を聞いて一番心に残ったことは、人間はずっと一〇〇%で生きているというお話です。僕はそれまで、人間は衰えて行って最後は〇パーセントだと思っていました。けれどこの話を聞いて人間は、ずっと一〇〇パーセントなんだ。それってすてきだな。と思えました。だから、これからは「どんな人も一〇〇%生きている」という視点で人を見てそして助けてあげたいなと思います。老人ホームへ行ったら、精一杯生きている人々の手助けを積極的にしたいなと思いました。
一年Bさん
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ここに紹介できませんでしたが、すべて端から端まで読ませて頂いて、若いこの子たちの純粋な感受性に驚きました。
私たちはこの視点で、人生の大先輩と関われる事を心から感謝いたします。どうか続けて皆様のご支援を宜しくお願い致します。

施設長 片村 元

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